「労働者派遣法抜本改革研究報告書」
 労働市場の活性化に向けた労働者派遣法抜本改革の方向性 ~法施行20周年にあたっての一考察~

2006年5月/社団法人日本人材派遣協会・労働者派遣法抜本改革研究プロジェクト

労働者派遣法抜本改革研究報告書(PDF:508KB)
  目次
 
1.はじめに
 1985年に制定、翌1986年に施行された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就労条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)」は、2006年7月に法施行満20年を迎える。この間、労働者派遣サービスは社会に広く普及し、労働者派遣事業は3兆円産業にならんとしている。また、派遣労働者も大幅に増加し、総務省統計局「労働力調査詳細結果」によると2005年第2四半期(4~6月)には、派遣労働者数は100万人(注1)を超え、その量・質ともに大きな変化を遂げたといえよう。労働者派遣事業は、今や我が国の労働市場を活性化し効率化する上で有用な機能を果たす存在となった。社会・経済的な影響度はますます大きくなっている。

 一方、1985年の労働者派遣法制定時に前提とした『経済社会情勢』・『労働者の価値観』と、今日のそれとは大きく異なっている。確かに、我が国における規制改革・規制緩和という大きな潮流やILO181号条約(注2)の批准など、派遣労働を取り巻くその時々の外部環境の変化に対応するために、何回かの法改正等制度の見直しがなされてきた。しかしながら、労働者派遣法については、厚生労働省において有識者による研究会が設置され、その研究報告に基づく労働政策審議会での見直し議論が行われるというプロセスを経た『本格的な改正検討』は未だなされていない。

 今後、派遣という働き方が一層広まり深められ、労働者派遣事業の使命(注3)を果たしていくためには、社会的な公平さ・公正さと経済効率性という二つの視点のバランスを取りながら、労働者派遣事業制度を大きく改革していくことが期待される。

 このような背景から、本研究プロジェクトでは、成人を迎えた労働者派遣法に関して、その将来の法改正論議に向けた参考資料をとりまとめることにした。まず、本プロジェクトの基本的な考え方、検討の方向性を明らかにし、次に、労働者派遣法制定から直近の法改正までの流れを総括する。そして最後に、安心で働き易い派遣労働の推進、円滑な事業運営の促進という観点から、現行法について見直しが必要と考えられる点を洗い出し、改革の方向性を探ってみたい。

(注1)総務省統計局の労働力調査では、2005年10~12月の派遣労働者数は114万人。同期の男女比は44万人:70万人で、2.5人に1人が男性である。同調査で100万人を超えたのは、2005年第2四半期(102万人)が初めて。
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(注2) ILO(国際労働機関)諸条約「民間職業仲介事業所条約」のこと。1997年7月28日に日本でも批准された。民間職業仲介事業所のサービスを利用する労働者の保護と共に民間職業仲介事業所の運営を認めるに当たっての枠組みを規定する。
『民間職業仲介事業所』の定義として、『労働者派遣事業』も含まれている。
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(注3) 社団法人 日本人材派遣協会の活動は、「雇用の創造と経済の活性化を通じた社会貢献」を使命としている。
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2.検討の方向性
改革試案の検討に先立ち本研究会の労働者派遣事業に関する基本的な認識、検討のスタンスを確認しておきたい。
まず、研究会のスタンスは下記の3点になる。
[1] 労働者派遣事業の諸規制は、原則自由化されるべきである。
[2] 労働者派遣法は、万人に理解・周知できる、遵守しやすい簡潔な法律とすべきである。
[3] 派遣元事業主は、自主的な規制の下に活動し、且つ業界として自浄機能を発揮すべきである。

 では、現行の労働者派遣法の諸前提について、上記のスタンスから導かれる基本的な認識について述べる。

(1) 労働者派遣は、「臨時的・一時的」な労働力の需給調整機能ではない。
 そもそも労働者派遣事業は、派遣先の常用雇用代替防止を前提としている。所謂政令26業務においては、実質的に派遣期間が規制され、また政令26業務以外の業務においては、1999年にその派遣が解禁された際に「労働者派遣事業制度は臨時的・一時的な労働力需給調整に関する対策」と明確に位置付けられた経緯がある。
 しかし、「不安定雇用(派遣)を制限すれば、安定雇用(常用雇用)が増える」という論理は、立証されていないばかりか、あまりにも短絡的で且つ労働者の質の多様性を考慮していない。また、派遣先進国である欧米各国においても、労働者派遣事業に対する制限の程度差はあっても、派遣労働者人口が就業者人口の5%を超える国はないのである。
 日本も批准したILO181号条約に則り、官民が協力して労働力需給調整に当たるということであれば、臨時的・一時的であるかは問題ではなく、人材派遣においても有料職業紹介等他の人材サービス同様な需給調整の役割を担うべきである。

(2) 労働者派遣は、役務の提供ではなく、人材の提供である。
  職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)の例外(注4)として、労働者派遣事業が許容された経緯としては、役務の提供である以上人材の提供ではなく、中間搾取や強制労働の対象にならないという解釈がある。
 しかし、政令26業務と所謂自由化業務の取扱においては、この解釈が貫かれているとは考えがたい。
 前者では人材において適用されている事項(雇用申込み義務)があり、後者では役務に適用されている事項(雇用申込み義務、派遣期間)がある。
 人材の提供であれば、事前面接の解禁や派遣期間が労働者一人一人に平等適用されること(注5)が可能になるのではないか。
 ただし、役務の提供でないとすれば、契約期間中の人材変更に対する考え方も整備が必要である。

(3) 派遣労働者の就業環境整備を目的とした法律への回帰が必要である。
 派遣法やこれに基づく現行規制は一体、誰のためにあるのか。
健全な労働者派遣業界の発展には、労働者派遣事業に対する信頼性の維持向上は欠かすことができない。事業規制法の性格を有しているといわれる現行の労働者派遣法を抜本的に見直し、平易であればこそ遵守し易い制度構築を求める以上、我々は協会を挙げて現行の法令遵守への徹底的な取組みを進める必要を強く感じている。
 さて、派遣元にとって、派遣先が顧客であることは言うまでもない。しかし、労働者派遣ビジネスにおいては、派遣労働者もまた派遣元の顧客なのである。もし、その意識がなければ、派遣就業における様々なトラブルが頻発し、派遣労働者の適正な保護はもとより安定就労は確保しがたいものになるであろう。
 派遣元にとって最大のミッションは、ベストマッチングの実現により、双方の満足度を最大限にし、よって我が国における雇用創出(注6)に貢献をすることである。そのためには、派遣労働者の多様性を考慮した上で、派遣労働者ゆえに課せられる諸規制からの解放は極めて重要であろう。
 「自分の就きたい職業に制限がある」、「同じ就業先で派遣として働きたくても法や派遣先の制度運用の仕方によって期間が制限される」、「事前に仕事の適性を指揮命令者等と確認し合えない」等の現状を打開するために、現在の事業規制を目的とした法律から、派遣労働者の就業環境整備を目的とした法律への見直しが必要不可欠であると考える。

(4) 労働市場における取引ツ-ルとして、労働者派遣がビジネスとして存在する。
  労働者派遣事業の主要な機能は、派遣先と派遣労働者のニーズのマッチングによる雇用創造・促進である。我が国の労働市場では、過去において期間の定めのない典型雇用が主体であったが故に非常に硬直的であった。しかし、今後は、派遣を含む多様な就労形態が労働市場全体としてマッチング(取引)を増大させ、その結果として労働市場を通じた雇用保障の実現を図ることが可能である。ここで  
重要なことは、様々な就労形態のうち、労働者派遣は「ビジネスとしてマッチング(取引)を行う」という点である。つまり、ビジネスとして入るが故に『サービス=機能』が最大の魅力となり、最大の武器とならなければならない。

 
派遣元は下記のサービスを提供する。

【対派遣先】
・迅速な適材提供(スタッフィング)
欠員時に迅速な労働力の補充ができる。
能力の測定や選別の手間を省くことができる。
・フラットな(固定費を抑えた)組織の実現
繁閑に応じた労働力調整が可能である。
コア業務とルーティン業務の切り分けによる雇用調整が可能である。
・労務管理負担の軽減
給与支払・社会保険加入・有給休暇の付与など雇用者としての手続きが不要になる。
間接費を見込む必要がないので、業務量に応じた予算化がしやすい。
・人事労務関連費用の抑制(募集・採用費、教育訓練費等)
成果予測不可能な募集広告費の計上や、履歴書選抜・採用面接などの労務が不要である。
事務用機器操作・マナーなどの基本的な能力教育を自社内で施す必要がない。
・社内業務の活性化
適度な人材の入れ替わりによって職場の沈滞化を防止できる。
適材な派遣労働者が入ることで業務の見直し・効率化を図られる。
【対労働者】
・雇用機会の提供(希望職種による就労、求職活動の軽減)
希望と適性に応じた就業先を見つけることができる。
就職情報収集する時間や労力を軽減できる。
・ライフキャリア開発(注7)(多様な生き方の実現、仕事のスキルアップなど)
希望する職種・条件で就業できる。
意思に反した転勤や異動が生じない。
(注4)労働者派遣法は、職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)の「例外」(職業安定法第4条の6に定義)として位置付けられている。
そもそも労働者供給事業を禁じていた目的は、間接雇用による中間搾取や強制労働があったからであるが、これらの目的は、もはや今日の時代性にそぐわなくなっている。
むしろ、労働者派遣事業に関しては、労働者派遣法において「雇用関係と使用関係との区分が、明確に分類されている」ことから、労働基準法の事後規制で対応ができると考えられ、今後も「例外」規定の扱いのままでよいのか、検討が必要である。
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(注5)所謂自由化業務では、派遣期間は同一業務へのサービスの通算期間で3年間の制限を受ける。故に派遣労働者の変更があった場合も業務開始時期から期間通算されてしまい、期中に派遣開始された労働者は、3年未満の期間制限を受けることになる。この通期の考え方は、現実的な運用に際しては不備が生じやすく(派遣先には起算日の明示が義務付けられていが、派遣元がその起算日の存在を知ることすらできない状態も考えられる)、また一層、派遣労働者の働く機会を制限することになっている。
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(注6) この場合の「雇用」とは、まず派遣元と派遣労働者との間に成立するものである。しかし、それだけに留まらず、紹介予定派遣によって派遣先と派遣労働者との「雇用」を成立させたり、派遣労働者のスキルアップを通じて将来の「雇用」を創造したりするという意味でもある
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(注7) ライフキャリアとは仕事・学び・余暇・家庭という人生の全ての局面を含む。
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3.労働者派遣事業制度の成立・改正の経緯
【年月日】
【改正内容】
1985年 06月11日 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)成立
07月05日 労働者派遣法公布
1986年 07月01日 労働者派遣法施行
  ・適用対象業務13業務
    ・労働者派遣契約上の派遣期間上限1年、2~10号上限9ヵ月、その他無制限
1986年 10月01日 労働者派遣法施行令の一部改正
    ・対象業務13業務から16業務へ3業務(機械設計等)追加
    ・追加3業務派遣期間上限1年
1990年 10月01日 労働者派遣法施行令の一部改正 (施行1991年1月1日)
    ・適用対象業務の内容拡大・明確化
    ・労働者派遣契約上の派遣期間上限9ヵ月と定められたものが1年に統一
1994年 11月01日 ・高年齢者に係る労働者派遣事業の特例設置 ネガティブリスト方式
・原則派遣期間1年
1996年 12月 労働者派遣法施行令の一部を改正する政令公布(12日)・施行(16日)
    ・政令16業務に11業務追加、適用対象業務が26業務となる。
    ・育児・介護休業特例労働者派遣事業制度施行
1999年 06月30日 労働者派遣法等の一部を改正する法律成立・公布(7月7日)・施行(12月1日)
    ・派遣対象業務原則自由化、自由化業務派遣受入期間1年に制限
    ・高齢特例労働者派遣事業及び育児・介護休業特例労働者派遣事業制度廃止
2000年 12月01日 紹介予定派遣制度施行
2002年 01月01日 雇用対策臨時特例法施行(2005年3月31日までの時限立法)
    ・45歳以上の中高年齢者に対して派遣受入期間を1年から3年に延長
2002年 03月29日 労働者派遣法施行令の一部改正 政令25号改正 金融商品の営業等追加
2003年 03月28日 ・社会福祉施設等における医療等の医療関係業務の派遣解禁
2003年 06月 労働者派遣法・職業安定法の一部を改正する法律成立(6日)・公布(13日)
2003年 12月25日 労働者派遣法・職業安定法の一部を改正する法律関係政省令等公布
2004年 03月01日 労働者派遣法・職業安定法の一部を改正する法律関係政省令等施行
    ・自由化業務の派遣受入期間1年から3年へ延長
    (派遣先労働者の過半数代表者の意見聴取必要)
    ・政令26業務の派遣期間3年制限(行政指導)撤廃
    ・雇用契約申込み義務新設
    ・製造業務の派遣解禁(派遣受入期間1年)
    ・紹介予定派遣の定義明確化、事前面接解禁
    ・医療関係業務の紹介予定派遣解禁
2006年 04月01日 労働者派遣法施行令の一部を改正する政令公布・施行
    ・病院・診療所などにおける医療関係業務の派遣一部解禁
    ・弁理士、公認会計士の派遣一部容認
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4.規制緩和・撤廃に向けた主要な個別論点と考え方
上記で確認した研究会の基本的な考え方、検討スタンスに基づき、以下の主要な個別論点に関するいくつかの考え方を整理し、改革の方向性を探る。
(1) 対象業務(禁止業務・業務区分の妥当性)
・派遣禁止業務においては、合理的な禁止理由がない限り解禁し、派遣労働者の『職業選択の自由』を保障すべきである。(日本ほど派遣禁止業務の多い国は他には見られない)
・専門職といわれる分野でも業務は多様化しているので、個人の役割は単一のものではないことを前提とすれば、業務の分類をすること自体が実態にそぐわなくなっている。また、専門性の考え方やその有無も観念的なものであり、平易な制度の構築を目指すためには『政令26業務』と『それ以外の業務』という業務の2階建て方式のあり方を根本的に見直すべきである。
・政令26業務を見ても業務別の割合をみると著しい不均衡を生じていて区分の必要性を感じられない。(注8)
(2) 複合業務
・政令26業務と所謂自由化業務とを厳密に区分することは、現実には困難であり、政令26業務には連続する周辺業務が存在する。であるから「政令26業務以外の業務が、時間にして1割以下」とする現行基準には大きな無理がある。時間のみではなく役割等を含め、政令26業務が『主たる業務』といえる場合には、政令26業務に該当する派遣として取り扱うべきである。期間制限を受けないようにすべきである。
・『主たる業務』の実現が困難な場合は、少なくとも派遣先就業に支障をきたさないであろう範囲まで政令26業務以外の割合を引き上げることが必要である。
(3) 派遣期間
・派遣期間の制限は撤廃し、労働力の需給調整(派遣期間等)は市場原理に任せるべきである。また、これにより派遣労働者の『職業選択の自由』を保障すべきである。
・常用雇用代替の防止を目的とすれば、派遣の規制は対症療法でしかなく、むしろ代替の中心は、契約社員、パート層である点を見落としている。
・派遣期間の制限は、派遣労働者の雇用を不安定にする。(期間制限以降の派遣先の変更は、何ら保証を伴うものではない。派遣受け入れ側の意向=派遣継続希望とは関わらず失業者を生み出す可能性がある)
・派遣期間の制限は役務サービスに対してなされるので、派遣労働者個々の雇用期間と無関係であり、派遣先での十分な技能習熟(スキルアップ)を阻害する可能性がある。
(4) 雇用申込み義務(雇い入れ)
・労働契約も本来、契約である以上両当事者の意思に基づいて成立すべきものであるから雇用申込み義務は、法律上の義務とすべきではない。
・『雇用申込み義務』ではなく『直接雇用への橋渡し機会』を、一般労働者派遣の機能としてもたせることは検討すべきであると考える。
(例えば、3年経過した全ての同一業務への同一労働者の派遣について、労働者の直接雇用意向及び派遣先の直接雇用の可能性を確認し、直接雇用への橋渡しをする、もしくはその確認を踏まえて別の派遣先へアサインをする等)
・雇用申込み義務は、労働者の雇用の安定を図ることが法の目的ある。よって特定労働者派遣においては常用雇用が確保されている以上、適用を撤廃すべきである。
・雇用申込み義務は、政令26業務の派遣期間自由化を阻害し、むしろ3年間の同一労働者の雇い止めを助長している。
(5) 許可・届出制
・事前規制よりも、事後規制の強化を図るべきである。その意味では、許可制でなくともよい。
(6) 事前面接
・派遣就業に際して、一定期間の継続受入をする場合は、派遣先・派遣労働者双方または片方の意思によって事前面接可能とすべきである。
・事前面接の目的は、当該派遣労働者受け入れに際しての適性・能力の確認である。
・事前面接については、年齢や性別による差別の排除はもとより、個人情報保護や複数候補禁止など上記の目的に則した適用がなされなくてはならない。
・事前面接は、派遣会社のマッチングに関する責任を何ら軽減しないものである。
・事前面接は、客観的な評価が難しい要件のマッチングに役立ち、結果、ミスマッチの回避となる。
(7) 派遣と請負の区分基準(昭和61年労働省告示第37号)
・派遣は人材の提供という考えが定着すれば、請負は役務(サービス)の提供という考え方に転換すべきである。そうすることによって、経営上の独立性は派遣と請負との区分基準とはならない(請負において、施設などの無償貸与があっても構わない)。
また、設備等の有償無償は、従来使用貸借でも認めていたにもかかわらず、1999年12月の改正で双務契約を要請したものであって、請負から論理的に導かれるものではない。
そして、請負代金の時間単価設定についても、何ら問題はなく認められるべきである。
・派遣と請負の区分基準は、請負業者による指揮命令等の労務管理の独立性のみとする。
(注8)厚生労働省の「平成16年度労働者派遣事業報告集計結果」では、政令26業務内で、5号業務「事務用機器操作」45.0%、10号業務「財務処理」11.5%に対して、22号「アナウンサー」0.0%、26号「放送番組等の大道具・小道具」0.1%、21号「インテリアコーディネーター」0.2%となっている。
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5.労働者派遣事業における派遣元・派遣先の新たな関係構築および関連問題
労働者派遣事業を運営していく上で、これまでたびたび懸案となってきたその他の論点の多くが、掲題に係る事項となっており、これらについていくつかの考え方を示し、改革の方向性を探る。また、併せて関連事項にも言及する。

■派遣元・派遣先の新たな関係構築
 法施行後20年を経て、更なる派遣労働者の保護並びに労働者派遣事業の適正な運営を図るため、派遣元・先の新たな関係の構築を検討することは極めて重要である。特に、派遣労働者の安全衛生管理、及びリーガルコストに関する、派遣元・先の責任分担のあり方をいま一度整理していく必要がある。

 まず、派遣労働者の安全衛生の向上を図るために、派遣先における安全管理教育・配慮等は、今以上に派遣先が責任を担う形が望ましいといえる。
 安全衛生に関連して、派遣先指揮命令下での派遣労働者の事故過失責任の在り方や、長時間労働などに起因する派遣労働者の疾病の派遣先管理責任の在り方等も検討を要する事項である。
 更に上記以外にも、派遣契約の履行に係る派遣先責任という観点からは、専ら派遣先の責任による派遣契約の中途解除に伴う、雇用契約期間の残存期間に係る派遣労働者への休業手当について、派遣先も相応の責任分担をすべきではないかという指摘もある。(注9)

 次に、派遣労働者の雇用と使用に係る雇用コストの負担や、各種労働施策上での派遣労働者の位置付けの検討も重要である。
 前者の雇用コストについては、例えば、社会・労働保険料における事業主負担は派遣元が全て負うべきものなのか。また、通常、派遣労働者は派遣元事業所において就業することはないので、事業所税の従業員割の対象から派遣労働者数は免除すべき(あるいは、派遣元と派遣先が、例えば3割と7割というように相応の負担割合にすべき)ではないか。こうした法定福利や課税制度等を検討すべきだと考える。
 後者の各種労働施策上での派遣労働者の位置付けについては、例えば、企業の障害者雇用率の設定は1人でも多くの障害者雇用を実現することと考え、派遣の場合は、派遣元・先の雇用率に二重計算を認めることについて検討すべきである。さらに、派遣元企業での産業医・衛生管理者等の配置に係る現行の基準は、先に述べたように「派遣労働者は派遣元事業所において就業することはない」という労働者派遣事業の特殊性からその見直しを検討すべきである。

■関連事項
まず、派遣労働者に対する『社会・労働保険適用』の問題がある。「短期・断続・移動」を特徴とする派遣就労においては、現行制度をそのまま適用すると様々な不整合が生ずる。これらの問題は当協会の平成17年度事業において提言がとりまとめられているので、詳細はそれに委ねることとするが、特に加入基準に関しては、派遣元間の移動が多い派遣労働者の場合、不利益・不都合が生じないように、併せて派遣元において誤解の生じない単純明快な運用ができるような加入基準を設けるべきである。

次に、派遣労働者の派遣就労における所謂『通勤交通費非課税取り扱い』の問題である。登録型派
遣労働者の大多数は「時間給方式での給与支払い」を受けており、通勤交通費は別途支給されないケースが多い。しかし、派遣労働者にとっては就業の為の必要経費であることに間違いはない。そこで、派遣労働者がその確定申告時に、然るべき書式にて通勤交通費を申告をした場合には、非課税の取扱いが適用されるようにすべきである。

(注9)派遣先は派遣契約の中途解除をする場合、契約の派遣期間残日数が30日超あっても、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることができないときには、労働者派遣契約の解除を行おうとする日の少なくとも30日前に派遣元事業主に対しその旨の予告をするか、当該派遣労働者の少なくとも30日分以上の賃金に相当する額について損害の賠償をすればよいこととなっている(「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置)。
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6.まとめにかえて
 労働者派遣業界の信頼性向上と持続的な成長には、サービスの質を向上させて顧客満足度を高めること、そして適正な派遣料金水準を維持することは欠かせない条件である。
 
 しかし、何よりも労働者派遣はヒトに関わるビジネスであり、最も重要な存在は派遣労働者であることに議論の余地はない。故に、労働者派遣業界の発展には、働く人々に安心感と希望をもって、派遣という働き方を選べるような環境整備が必要不可欠といえよう。
 と同時に、派遣労働者への適正な給与水準を維持し、能力開発を促進し、派遣就労を通じた有意義 なキャリア形成をサポ-トをしていくことが必要である。とりわけ、派遣労働者の賃金に関しては、業界横断的な職種及び能力別の賃金水準の構築を検討することも重要である。少なくとも、派遣という労働市場においては、どの派遣元で就業しても、公正で公平な評価を受け、それに合致した業界レベル賃金を得る意義を研究する必要があろう。
 更には、派遣先労働者との賃金、待遇などの『均衡処遇』という大きな課題も存在する。しかし、それ以前に安全衛生や教育研修あるいは施設利用といった『均衡処遇』の拡充については、派遣業界としては派遣先全般に働きかける責務を負っている。派遣労働者の福利向上にも努め、より魅力的な就労環境を提供することが、当面重要であると考える。

 労働者派遣事業の使命・機能は、派遣先と派遣労働者のベストマッチングを実現することにより、双方の満足度を最大限にし、よって我が国における雇用創出に貢献をするということである。その使命・機能をより効果的に実現するためには、一段の規制緩和さらには労働者派遣法の抜本的な見直しは不可欠である。

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労働者派遣法 抜本改革研究プロジェクト委員名簿
 
 
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